2016
12.22

海の見える理髪店

Category: 小説・文学

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荻原浩 『海の見える理髪店』 (集英社)


― 伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時」に戻ることができたら…。
母と娘、夫と妻、父と息子。近くて遠く、永遠のようで儚い家族の日々を描く物語六編。
誰の人生にも必ず訪れる、喪失の痛みとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集 ―

BOOKデータベースより


表題作 『海の見える理髪店』 が最初に収められているんですね。

少し、意外に思いながら読み始めました。

海辺の小さな町にある理髪店

店主が自身の過去を、お客の〈僕〉に語り始める。

『いつか来た道』

厳しかった母親を避け、ひとり暮らしをする私。

十六年ぶりに帰った実家で見た母の姿は。

『遠くから来た手紙』

仕事人間の夫に嫌気がさし、実家に身を寄せた妻に不思議なメールが届く。

『空は今日もスカイ』

両親の離婚から、母親の親戚の家に暮らす少女。

そこで出会った少年と海を目指す。

『時のない時計』

父親の形見の腕時計を修理してもらうために訪れた時計店。

そこから見えてきた父の姿とは・・。

『成人式』

事故でひとり娘をなくした夫婦が、成人式でとった行動とは。



↓ 少し、ネタバレがあります<(_ _)>

『海の見える理髪店』

〈これから髪を切るというのに僕は、ガラスに映る髪の乱れを直す〉

読み終えてから、この一文がすべてを物語っていたと分かりました。

この話、好きです。

『いつか来た道』

38歳になる弟から

〈会ってやってよ、ママに〉と、連絡が来ます。

そして「いま会わないと後悔すると思うんだ」とまで言われ

十六年ぶりに帰省します。

弟の言葉から、母親がいまどのような状態なのか

ある程度、察しはついているんです。

でも、認めたくないんです。

親子って、そういうものですよね。

すごく、納得のいく作品でした。

『遠くから来た手紙』

すこし、不思議な話でした。

でも、若い夫婦のやりとりから現実も見ることができ

ラストの一文にフッと笑みが零れてしまいました。

『空は今日もスカイ』

居心地の悪い親戚宅での暮らし。

少女は、海が見たくなり家を出ます。

途中、出会った少年は義父から虐待を受けていました。

少年の叫びに胸が痛くて・・。

読んでいて辛くなりましたが、現実でも起こりうることなんですよね。

『時のない時計』

お客の持ち込んだ形見の腕時計を修理する老店主。

店に置かれた数々の時計の思い出。

修理の腕時計から見えてくる元の持ち主の姿。

老店主がすこし意地悪なのも、面白く読みました。

『成人式』

事故で亡くなった娘を思う夫婦の心情が悲しくて。

娘が出席するはずだった成人式に振袖を来て行く母親。

父親は、真っ赤な羽織と銀の袴姿。

そうでもしないと気持ちの整理が付かないのだろうなだろうなと

夫婦に寄り添う友人のような思いで読んでいました。


長く書きました。

それほど、この作品は胸に沁みました。

今年読んだ本の中で一番かも知れません。

感想は、その時の状態で変わってくるもの。

『海の見える理髪店』 を夏に読んでいたら

もっと違う感想になっていたでしょうか。

いま出会えて良かったです(^▽^)


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2016
12.09

『地蔵千年、花百年』 柴田 翔

Category: 小説・文学

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柴田 翔 さんの 『地蔵千年、花百年』 

読み終わりました。

時間がかかりました。

『されど われらが日々』 10代後半に読みましたが

本についての感想など

そのとき、若い私はどういう気持ちになったとか

すっかり忘れていますから

久しぶりの(30年ぶりの長編)柴田翔さんの作品を

サクサクと読めるはずもなく、ゆっくり読みました。


若い加見直行はある男に誘われ〈見知らぬ異国での慣れぬ冒険へ踏み出す〉

貿易商としての始まりと、現地での出会い。

そして、恋。

日本に帰ってからの生活。

家族との時間、商店街の店主たちとのやり取りなど

加見も感じているだろう、温かく幸せな気持ちが伝わってきて、読んでいて楽しかったです。

生と死など、避けることのできない事柄も

若いころの私より、今なら理解できることも多くなってきました。

ただ、宗教観、地霊など、文字としては頭の中に入るけれど

理解することは難しかったです。

深く考えると(?)となることもありましたが

柴田翔さんは10月24日付、中日新聞のインタビューで

「ストーリーがきちんと整っていることにこだわる必要はないと思っています。

読むとつじつまが合わないところがあるかもしれない。

でもどうせ、人生だってつじつまの合わないまま終わるんですから」

なるほど。

読後感は大満足でした。

(大作を読んだあと、感想を書くことの難しさ

語彙力が乏しいことからくる情けなさを痛感しています) ε-(ーдー)



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2016
11.05

季刊文科69号

Category: 小説・文学


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『鳥影社』 さんから無事、届きました。

今日、代金(1,620円)を振込みました。

文芸雑誌で1,620円は高いのでしょうか。

柴田翔さんの作品が単行本化されるまで待つこともありですが

なぜか、買ってしまうのです。文芸誌を・・。


10代後半の頃

“柴田翔”さん、“三田誠広”さん、“庄司薫”さん、など

背伸びをして読んでいました。

“佐藤愛子”さんも大好きな作家さん。

しばらく遠ざかっていましたが

『九十歳。何がめでたい』(小学館) が、気になっています。

背伸びをしてでも、素敵な作品をたくさん読んできて良かったと改めて思います。


積まれている文芸誌、読みます。



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2016
11.01

文芸誌

Category: 小説・文学


最近購入した文芸誌

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『小説BOC』 は予約してあったので無事に届きました。

『小説幻冬』 は、書店で買うつもりでしたが

甘かった・・・。

ジュンク堂書店で在庫を訊いたところ、名古屋市内全店で在庫切れ。

入荷の予定もなし。

あきらめ半分で三省堂書店に行ったところ

なんと、山積みされていました。

書店さんの裏事情は分かりませんが

無事、購入できたので良かった、良かった。

こちら ↓

予約をすれば良かったと激しく後悔。

ネット、書店さん、全滅。

鳥影社さんに注文しました。ただいま問い合わせ中。

在庫は無いだろうなぁ~。

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文芸誌で読むことが叶わないときはあきらめます。

ぜひ、柴田翔さんの作品を単行本で刊行してください。


文芸誌がアツいなと感じた秋。

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2016
02.11

滝口悠生さん

Category: 小説・文学


2016年2月10日、中日新聞(夕)

芥川賞受賞エッセー「おたま」と念じながら

― 2011年に「楽器」という作品で新潮新人賞をいただいてデビューした時、選考委員のひとりである川上未映子さんの選評にはこんなことが書かれていた。
「どんな菜箸でもおたまはカーンとは鳴りません」
応募原稿のラストでひとりの女性が片手に持ったおたまを菜箸で叩いてカーンと鳴らす場面について、そんな音はしないはずと言うのだった ―

こう書き出された滝口さんのエッセー。

そしてこんなことも。

― 小説を読むというのは、書かれた言葉と読む人との取っ組み合いみたいなもので、でもそれは喧嘩じゃないから、隙を見せたらやられるのではなくて読み手に去られるだけだ。書き手が気を抜けばいつでもその関係は崩れる。さぼるな。あの選評を通してそう教えられた ―

滝口さんのお人柄が偲ばれます。

川上さんは、おたまを3つも買ってきて叩いてみたらしいです。

選評をする川上さんの真剣さも伝わるエッセーです。

『楽器』おたまの箇所は書き直されたそうですよ。

滝口さんの作品を読みたくなりました。


初読みの作家さんの本は

粗探しでは無いけれど、読み手である私が

(どれ、どれ、では読んでみようか)

と、偉そうな態度で読み始めることもあります。

(ごめんなさい)

滝口さんの作品は、既に好きになりそうな予感がします。

まずは『楽器』が収録されている

『寝相』から読ませて頂くとしましょうか。

あっ、私はまた偉そうだ。
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